介護職員の賃金アップが決定! ただし介護報酬は引き下げへ

介護業界の現状を語るとき、一番クローズアップされるのが、働き手の問題。

「賃金水準が低い」

「人材不足

「やめる人が多い」

他の業界に比べ、これらのウィークポイントがより大きいのです。

こでこれらの問題を改善しようと、国が3年ごとに行う介護報酬の改定で、介護職員の給与を引き上げることになりました。

賃金の引き上げと介護報酬の引き下げ

今回の改定で上げようとしているのは、「処遇改善加算」。
これは、事業者が職員の給与を引き上げるための資金となるもので、人件費以外には使えないことになっています。すでに月額15000円支給されていて、今回の改定ではさらに12000円の増額となり、合計で27000円ということになります。ただし、この加算には以下のような要件があり、施設や事業所がその要件を満たしていなければなりません。

(1)キャリアパス要件

職務に応じた任用要件と資金体系を整備すること
資質向上のための計画をたて、研修の実施、または機会を作ること

(2)定量的要件

4月以降、賃金改善以外の処遇改善への取り組みをあらたに実施すること

それと同時に、4月から適用する介護保険サービスの新たな料金体系(介護報酬)では、2.27%の引き下げとなりました。利益率の高い特別養護老人ホームなどの施設の料金を安く、利益率の低い訪問介護などの在宅サービスを高くしたのが特色です。
つまり、今回の改定は「全体の介護報酬を2.27%引き下げ、介護職員の賃金は月額12000円引き上げる」というものになります。

9年ぶりの引き下げに反発も

介護報酬は3年ごとに見直されており、これまで4回の改定が行われました。
1回目と2回目は2%あまりの引き下げで、そのため人件費が削られ、「大変なわりに給与が安い」と若い人の介護離れが進みました。
そこで3回目と4回目には、介護報酬を引き上げました。さらに処遇の改善に取り組んだ事業者には交付金を出すなど、賃上げを促しました。これにより、介護職員の給与は月額3万円ほど増える効果があったようです。
その流れで、今回の改定でも事業者は引き続き、介護報酬の引き上げを見込んでいたのですが、その期待とは裏腹に、全体で2.27%の引き下げとなってしまいました。中でも大幅に引き下げられることになった特別養護老人ホームは、強く反発しています。

事業者の収入減が賃金に影響?

介護報酬を引き下げて、処遇を改善する、これはとても難しい部分があります。
介護保険制度では、事業者に支払う報酬の額を国が決めています。これが介護報酬であり、事業者の収入です。

財務省は、今回、処遇改善加算として12000円の加算を行うため、介護報酬を引き下げても、賃金は引き上げられるとしていますが、事業者の収入そのものが減ることになるので、これまで支払ってきたボーナスなどの額に影響する可能性は捨てきれません。

また、この加算は介護職員の賃上げには使用できますが、同じ施設内の看護師や調理師などの賃上げには使えないことになっています。その分は、事業者が負担することになりますので、これに反発する事業者も多いようです。

適正な賃金水準の設定を

介護職員の平均賃金は月額20万円あまり。他産業の平均に比べ、9万円近くも低くなっています。今後、人手不足で制度が破たんしないためには、この格差をなくす努力が必要でしょう。若い人たちが「この給与なら介護の仕事をしてみよう」と思えるような、仕事内容に見合った賃金を、まずは設定する必要があります。そしてそのうえで介護報酬の額を決めることなどを、検討する必要があると思われます。

誰もが安心して働ける業界にしてこそ、介護保険制度の立て直しにつながるといえるでしょう。

介護職員確保へ数値目標、厚労省 賃上げ・資格緩和-日本経済新聞 2014/10/27: http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF27H17_X21C14A0EE8000/

介護費「賃上げ」除き抑制 厚労省3年ぶり改定、増税延期響く-日本経済新聞 2014/11/27: http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H3H_W4A121C1EA2000/

平成27年度介護報酬改定について-厚生労働省: http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080101.html

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