介護タクシーってどんなサービス?

「介護タクシー」をご存じですか?
正式には「通院乗降介助」と呼ばれる、介護保険が適用される訪問介護の一種です。
介護を必要とする利用者の通院などに利用でき、車いすやストレッチャーごと乗降できる車両が一般的。運転手は介護職員初任者研修の取得者で、介護とタクシーが一体となったサービスを提供します。
要介護者にとっては非常に利用価値が高く、ニーズも高まりつつある介護タクシー。
今回は、この介護タクシーについて、サービスの内容や利用の条件、乗務員になるために必要なことなど、さまざまな角度から詳しくみていきましょう。

介護タクシーがしてくれることって?

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要介護の高齢者が外出するときは、公共交通機関を使うことはほとんどないと思われます。
とくに車椅子利用者や、寝たきりの場合、そのまま乗車できる福祉車両を使っての移動が望ましいのは言うまでもありません。
そんなとき頼りになるのが介護タクシーです。自動車の第二種免許と介護資格を併せ持つドライバーは、通常のタクシーのように運転席に座ったままではありません。自宅に入り、ベッドから車への移動、病院での受付から受診科までの移動、さらに診察後は会計や薬の受け取り、そしてタクシーに乗車して帰宅しベッドに入るまでと、移動だけでなくそれに伴うさまざまな介助を行います。
通院のときの介護タクシーのサービス内容をまとめると、

① 自宅や介護施設に入り、利用者の健康チェック
② 通院のための着替えや身だしなみの手伝い
③ ベッドから車椅子への移乗、介護タクシーまでの移動の介助
④ 自宅を出る際の、消灯や施錠の確認
⑤ 病院についたら降車、受付、受診科への移動
⑥ 診察後の会計と薬の受け取り
⑦ タクシーへの乗車、帰宅後は降車と部屋までの移動
⑧ 着替えの手伝い
⑨ 車椅子からベッドへの移乗

このように、外出の準備から始まり、自室のベッドから病院へ、そしてまたベッドへの、すべての移動と、受診に関わる手続きのサポート、帰宅後のケアなど、介護資格を持つドライバーならではのサービスを提供しているのが、介護タクシーなのです。

介護タクシーの利用対象者とは

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介護タクシーを利用する人は、いくつかの条件を満たしている必要があります。
以下に、介護タクシーの利用対象者をあげてみましょう。

■ 自宅で生活している人

特養や老健などの介護保険施設、グループホームの入居者や、入院中の場合は対象外になります。介護タクシーは訪問介護サービスなので、一日中介護サービスを受けている介護保険施設では利用できません。
ただしその他の有料老人ホーム、介護付き高齢者住宅などは、居宅とみなされて利用することができます。

■ 介護度が要介護1以上の人

介護認定を受け、担当のケアマネージャーが決まっていて、要介護度1以上の人は利用対象者になります。要支援の人は対象外です。

■ 介護タクシーの必要性がある人

家族構成、心身の状況などから、必要性があるとケアマネジャーが判断した場合。要介護度が1以上でも、自分で受診の手続きなどができる人は対象になりません。ケアプランには、利用の必要性を十分に盛り込む必要があります。

■ 公共交通機関を一人で利用できない人

バスや電車はもちろん、自家用車の運転ができない、自転車に乗れないなど、移動手段のない人が介護タクシーを利用できます。

■ 訪問介護サービス事業所と契約している人

介護タクシーに対応している事業所との契約がすんでいる人が対象になります。

■ 介護保険サービスの利用が支給限度内の人

 介護保険サービスには介護度によって支給限度単位が決まっており、利用単位の合計がその範囲内であることも条件になります。

介護タクシーが対応できる利用目的

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介護タクシーは介護保険サービスのため、利用目的にも制限があります。
では、どんなケースで使えるのか、使えないのか、主な例をみていきたいと思います。

<対応可能なケースの例>

① 通院(鍼灸は不可)
② 役所などの手続き
③ 金融機関の手続き
④ 選挙の投票
⑤ 通所する施設などの見学
⑥ 生活必需品の買い物

※ただし②~⑥に関しては、利用者の状況やケアマネジャーの判断により、認められない場合も。

<対応不可なケースの例>

① 入院時と退院時、病院から自宅、病院から病院への移動
② 介護保険施設の入所や退所、通所サービスの送迎
③ 習い事、旅行、冠婚葬祭、墓参など
④ 交通事故による通院治療

これらの例については、自治体や担当者により認識の違いがあります。利用可能かはっきりしないケースは、事前に問い合わせることが大切です。

介護タクシードライバーに求められるもの

それでは最後に、介護タクシーの乗務員になるために必要な資格と、ドライバーが持つべき心構えについてお伝えしましょう。

介護タクシーの乗務員には、
●第二種運転免許
●介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)以上

の二つの資格が必要です。

介護タクシーは普通のタクシーと違い、お客様を乗せて走るだけではありません。介護を必要とする利用者が快適に外出できるよう、乗務員にはさまざまな気配りが求められます。

まずはドライバーとして、振動の少ない安全運転を心がけ、利用者の身体に負担がかからないように配慮することが大切。
もちろん、介護のプロとして、車椅子への移乗や車の乗り降り、移動の介助をスムーズに行えるスキルは必須です。
そして、完全予約制の介護タクシーは、時間厳守が鉄則。
利用者には病院の予約などのスケジュールがあり、お迎えの時刻に遅れるとその予定が狂ってしまいます。交通事情を下調べするなど、余裕を持って対応する必要があります。
さらに、相手の気持ちを思いやる対人スキルも重要な要素といえるでしょう。利用者のプライベートなことに言及しないよう、話題も慎重に選ぶ心づかいが求められます。
とくに利用者の身体の具合や病気のことなど、デリケートな話題は避ける気配りも必要。明るい話題と自然な笑顔が、緊張している利用者の心を解きほぐすのです。

終わりに

介護タクシーについて、さまざまな面から見てきました。
高齢者の増加に伴い、生活の足として、介護タクシーの利用者は急増しています。
介護を必要とする人にとって、外出はひとつの大きなイベント。そんなとき頼れる介護タクシーは、今後もますます人気が高まっていくでしょう。
介護資格を持つ人の新しい選択としても、注目していきたい業種といえそうです。

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